最近産業界では、円高によりグローバル化にますます拍車がかかり、コスト削減と高付加価値化のためのネットシェイプ等の部品の仕上げレスが進んでいます。鍛造技術では、板鍛造が生産性の面で注目されていますが、最近の鍛造技術では単独工法だけでなくプレス工法（曲げ絞りなど）と鍛造工法を組み合わせた新たな冷間鍛造技術が主流になりつつあります。例えば、自動車のオートマチックトランミッション等の機能部品の開発などがその例です。また、これらの鍛造技術の開発で密かに注目されているのが、超硬合金材を用いた閉塞鍛造金型等の直彫り磨きレス加工です。超硬合金材を用いる金型の加工は、切削ができる工具の開発が遅れていたこともあり従来から余り変わった金型加工方案がなく、放電加工（ワイヤ放電加工も含む）や研削加工（治具研削加工も含む）でダイ、パンチの加工を行った後、手磨きやツールドホーンを用いて加工面を仕上げ、加工するやり方が長く行われてきました。最近は、パンチ、ダイなどの表面処理を行うことも多くなってきています。ところが、最近、ダイヤモンド系の切削工具（PCD、NPD、DLC等）が開発されたことから、超硬合金材の直彫り磨きレス加工が注目され始め、金型メーカ、超硬合金材メーカ、工具メーカ等で実用化に向けた開発が盛んに行われています。

　本テクニカルセミナーでは、鍛造金型製作で脚光を浴び始めている超硬合金材の直彫り磨きレス加工に焦点をあて、ダイヤモンド工具の開発状況と直彫り磨きレス加工の可能性などの現状について専門の方々に講演を頂くことに加え、鍛造金型の直彫り磨きレス加工の現場の工場見学を行うことにしました。なお、同業者のご受講はご遠慮いただいております。

【コーディネーター】 　

東京工科大学　名誉教授　福井 雅彦氏

 最近工具材料、金型材料として使われてきた超硬合金材を直彫りで加工するための工具の開発が注目され脚光を浴びている。現在超硬合金材を直彫り加工ができる工具としては、ダイヤモンドコーテング工具、PCD工具、ナノ多結晶ダイヤモンド工具などがあり、工具メーカが新たな商品としてPRを行い始めている。この状況を踏まえ、超硬合金材の直彫り磨きレス加工の現状と今後について実例を交え紹介する。

超硬合金の精密加工に於いて高速加工機での直彫りが新たな加工方法として近年、構築されつつある。

進歩する多種な工具を用いてそれぞれの現象や効果、特徴を観察して加工現場での活用方法を検証する。 

高硬度材を高能率かつ高精度に加工するニーズに応えるために、スミダイヤバインダレスNPD10を開発した。NPD10は、結合材を含まないバインダレスPCDで、ナノ多結晶ダイヤモンドとも呼ばれている。このNPD10 を用いたボールエンドミルを開発、超硬合金の直彫り加工において、良好な加工面粗さが得られ、工具としての性能を確認した。さらに、実際の金型を模した文字彫り加工においても、安定加工が可能で良好な加工面粗さが得られていることを確認した。これより、NPD10の材料特性と超硬合金の加工事例を紹介する。

＊いずれもテキスト付き
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